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ZEEBRA 25 To Life

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Text by Riddim Online

アーティスト活動四半世紀を迎えたZeebraがリリースした13曲入りの記念すべきアルバム『25 To Life』。若いインディーズ・アーティストからベテラン勢、さらに福原美穂と多彩なアーティストが参加、加えて自らが手がけたトラックまでを熟練のリリシストが乗りこなす。

●まず、25周年おめでとうございます。初期のヒップホップは、それこそアンダーグラウンドで、その「知られていないこと」自体が「格好良い価値観の一部」だったかもしれません。Zeebraさんは、その成長と変化の最前線で牽引されてきて、当初あって今はなくなった魅力、そして時が経っても変わらない魅力とはどういうものでしょう?

ZEEBRA(以下Z):短い時期だけを考えると、これはクリアランスの問題で「もうPUBLIC ENEMYの2枚目はつくれない」って言われるじゃないですか。今あれをつくると、売れば売るだけ赤字になる。DE LA SOULのファーストなんかもそうかもしれません。そういう「サンプリング・コラージュ」に対する規制は当り前かもしれないけれど、規制によってそこにあった可能性が薄くなっちゃったのは、今までの歴史で一番残念なことな気がします。ヒップホップのプロダクションに関して「これ、ループ何個重ねてんだよ?」っていう。あの、「ここのサンプリングの中域削ってる分こっちの中域出して」とか、色んなことをやってコラージュしてつくる感じは、当時自分でもつくってて本当に楽しかった。でもそれだって1987、8年から2、3年の間であり、「その時が特別だった」と思うしかないのかなって。あとは、もし当時「ヒップホップは新しい、みんなが知らないもの」という優越感があったとすれば、それは「『日本では』みんなが知らないもの」。逆に言うと、オレにとっては初めから「『USでは』ストリートの若いヤツらがみんな知ってるもの」という意識だったので、「ポピュラーである」ことに対して斜めに見ることは一切ないんです。

●最初から素で、「本来とてもメジャーなもの」という意識。

Z:ただ当時、「あえてもっとポピュラーにしようとする」ことによってダサくなってるヒップホップって向こうにもあったと思うんですね。それはMCハマーだったりとか。

●嫌いじゃないけどYOUNG MC的な。

Z:他にはTONE LOCや2LIVE CREWとか。その辺ていうのは、当時かたやRAKIMやKRS-1とか、アートフォーム、テクニック的にもどんどん進化しているヒップホップがあるのに対して、商業的な成功をおさめるためにつくられたようなラップの曲があって、それらは正直滑稽に見えてました。そこで例えば「L.L. COOL J.がすごい売れている」と。それをヘイトの目で見るのは「ただのヘイター目線」で、実際フッドの女の子たちはキャーキャー言っている。それはTHE SOURCE以前、向こうの「WORD UP」マガジンとか「HIP HOP MASTERS」あたりの雑誌で、BIG DADDY KANEとBOBBY BROWNが同列に「女子高生たちのアイドル」的な扱いだったわけですよね。それで裏にはBELL BIV DEVOEのポスターも付いている。だからある意味、ラッパーもストリートでは「アイドル的存在」だったわけです。

●「全国区のアイドル」と「フッドの人気者」が同列に扱われていた。

Z:オレはもともと「それが正しい」と思っていて、だから「エンターテイメント的に消化する」みたいなことに対して、すごく普通な気持ちでやってるところがあるかもしれないです。だから、「知らないものを知ってる自分が嬉しい」というより、純粋に「ヒップホップを知ってる自分が嬉しい」気持ちがメインでした。もしオレが「人の知らないもの好き」だったら、たぶんZOOが流行った段階でやめてますね。でもあの時、「よしきた!」と思ったし、「これからヒップホップが日本を席巻する」と思いました。

●1曲目「The Last Letter」のリリック「激甘MC I eat u like a cupcake」が、Rakim“Microphone Fiend”の「I melted microphone instead of cones of ice cream」を連想させました。

Z:昔、覚えたくて仕方なかったリリックはRakim“Microphone Fiend”。あれは80何小節、サビ無しでずっとラップする。本当に「Fiend=魔人」だけに、当時、「ラップをすることに中毒な感じ」というのが、しかも毒々しく表現されている感じがすごくして。もちろん歌詞カードなんかなかったですが、「これは何としても覚えたい」と。

●やはりRakimは凄い?

Z:映画「ART OF RAP」で本人が語っていますが、「親がジャズやソウルを聴いてて、そのジャズのソロのようにラップをデリバリーした」というのは、本当にその通りだと思います。当時はまだ、そんなRakimの言葉は伝わってきていませんでしたが、オレはその頃から「これはそうだろう」と思ってました。自分も「何らか刺激を受けられるかな」ってコルトレーンやマイルスを聴いてましたし、それは特に「ソロの時の持っていき方」。ソロでは決まったフレーズをずっとやるわけじゃなくて、展開させていくわけじゃないですか。その「展開のさせ方」が、あのラップの「決まった譜割りで歌わない」感じに通じている気がして。最近のダンス・ミュージックっぽい曲では決まった譜割りっぽくなる傾向が強いですが、あのRakimの感じは「ジャズのソロに近いのかな」と。

●アルバムの後半、前半はそれこそ最近のダンス・ミュージック的なものから、最後の方はサンプリング色が強くなっていくように感じます。そこはやはり思い入れがあるから?

Z:あまり「昔の音をやりたい」という意識はありません。今回結構サンプリングの音が入ってきたのは、たぶん実際に今のワールド・ヒップホップ的な部分に、そういうぶり返しがあるというのがデカい。例えば、リズムの取り方はサウスっぽい、BPM70ぐらいのものを倍でとるような曲でも、例えばASAP Rockyはそれをサンプリングでつくってる。ウチの息子が今21、22歳ですが、ヤツら世代が意外とそういう90年代の音が好きなんです。それこそ次男坊はビートつくるんだけど、基本4つ打ちとヒップホップの中間みたいなビートで、でも、できたのを聴かされたことは一度もない(笑)。とはいえ音が鳴ってるのは部屋から聴こえてて、この前はBRAND NUBIANネタがまんま4つ打ちになってたりしてました。だから、オケ的にはサンプリング感出てるけど、キックの感じはモロ4つ打ち。それって、オレは1971年生まれなんですが、70年代の音楽は心地いいんですね。それがもしかすると、「90年代生まれには90年代の音が染み付いている」感じがして、だからそういうブリ返しが、同じものではないけれど、何かが回転してるのは感じるんです。

●お子さんに特に意識的に教えたり、伝えていることはありますか?

Z:何にもないですね。

●ただ、ご自分のライフスタイルを見せている。

Z:とはいえ、「ケンドリック・ラマーの新しいヤツ聴いた?」、「あのヴァース、ヤバくね?」みたいな会話はいつもしています(笑)。まあでも、あれぐらいの世代となるとヒップホップは空気みたいなものですよね。

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